「ただいま……」
顔に疲れがあからさまに表れている。
そんなわが子を、ふたりは労うように迎えた。
「お疲れ様。どうだった?」
「正式に許可して下さったよ」
「よかったなあ。スネイプ先生とは?」
には笑顔で答えただったが、の口から「スネイプ」という固有名詞を聞いた途端、眉間に皺を寄せて顔を思い切り顰めた。
それはもう、発端である人物にも劣らぬ勢いで。
「考えて緊張して、あんまり眠れなかったんだからしょうがないのに!言っても聞いてくれないし!嫌味ばっかりで!……やさしいとこもあるけど」
最後に不服そうにぼそりと言った言葉を聞いて、何があったのかは知らないが、は笑みを零した。
「それで、予定は立ったのか?」
さりげなく、先を促す。
はそれで思い出したように話を続けた。
「うん、金曜日の午後は半日だからそこが都合がいいだろうってことになった。あと、たまに土曜日もやってくれるって」
「よかったじゃない。ちゃんとのこと、考えてくださって」
「まあ……。あ、そうそう、せっかくの夏休みだから3週間早めに切り上げて先生の家で基本事項の確認だけでも済ませようって話に……」
はふたりに承諾を求めるように視線を投げかけた。
「またとない、いい機会なんじゃないか」
「でも……スネイプ先生の家に泊まり込みで、そのままホグワーツだよ」
「ちょっと早めに家を発つくらいどうってことないわ。それにスネイプ先生になら安心してを預けられるし」
「え、いいの!?」
「当たり前よ、ねえパパ」
「ああ」
考えていたよりも、速やかに話が進んだ。
勉強に関しては許容範囲の広い両親で、はとても感謝した。
「先生が、『そこはご両親に伺ってから』って言ってたから……、パパもママもありがとう」
今日一番の笑顔を見せたに、両親も頷いて笑顔になる。
そうと決まれば、ぐずぐずしていられない。
家を発つ日は数日後に迫っているのだ。
すぐに制服やローブ、学用品の荷造りをしなければならない。
「、新しい教科書類はどうする?」
「手紙が届くのはもう少し先だから……先生の家から行くことにする」
「それがいいわ。パパとママからのことをお願いしますって、明日にでも手紙を送っておくから」
「うん、ありがと」
こうして、は部屋に戻り、出発の準備をすることにした。
補習の面倒を見てくれるのが敵寮の寮監で、とても不安だったが、魔法薬学の話となるとそれはまた別のことのようで、対等に接してくれた。
さすがに、本日のねちねちとした説教にはうんざりしていたが。(自分の非も少なからず感じてはいる。)
それでも遠い将来と来る出発の日におぼろげながらも希望を見出し、は自室はと続く階段を駆け上がった。